連載企画:つみたてNISA/iDeCoはなんのためにあるの?そもそもどんな制度なの?
▶前回の内容:iDeCoの始め方|口座開設から商品の選び方まで
つみたてNISAは長期間の資産形成制度で、iDeCoは公的年金制度にプラスして年金を受け取る制度です。
厚生労働省によると、夫65歳以上妻60歳以上の厚生年金モデル世帯の月々のお金は、以下のようになっています。
- 〇収入
- 209,198円でその内年金が198,880円
- 〇支出
- 263,718円(税金や社会保険料も含む)
- 〇不足する赤字額
- 約5万5千円で95歳まで生きると2,000万円
2019年(令和元年)の金融庁の「高齢社会における資産形成・管理」報告書によると、年金以外の収入がなくなる、あるいは少なくなる年齢(65歳ぐらい)までに、各々不足する金額を貯めておくようにと訴えていて、その資産形成の方法も記されています。
資産形成の方法として取り上げているのが、つみたてNISAとiDeCoです。
つみたてNISAとiDeCoの資産形成のメリット
2,000万円不足すると示されているのは、厚生年金モデル世帯なので、それぞれの世帯で不足する金額は異なりますが、不足する世帯が多いと予測されています。
リタイアした以降は資金を貯めることが難しいので、現役世代の若いうちから資産形成に興味を持ち、始めることが有効です。
つみたてNISAとiDeCoは、現役世代に向いた資産形成支援制度で、主に以下の2点のメリットがあります。
- 非課税で貯めやすい
- 長期間の積立と分散投資でリスクを避ける
非課税で貯めやすいことに加えて、長期間積立と分散投資で積立元本を増やしていけます。この2つのことで、つみたてNISAとiDeCoは、今の時代では合理的な資産形成法と言えます。
非課税制度
非課税のメリットはどのような点ですか?
iDecoのメリットは掛け金が全額所得控除になるので、節税効果が期待出来ること。つみたてNISAのメリットは投資によって得られる利益の最大40万円(年間)まで税金がかからない(非課税)ことです。
利益にかかる税金
通常の資産運用では、利益にかかる税金は、所得税が15%、住民税が5%、復興特別税が所得税の2.1%であわせると20.315%になります。
つみたてNISAとiDeCoでは運用益が出ても非課税なので、この税金の差し引きがなくなるので資産形成に非常に有利です。
毎月2万円を年利2%で40年間積み立てた場合
- 〇課税あり
- 元本960万円で利息が約380万円合計約1,340万円
- 〇非課税
- 元本960万円で利息が約505万円合計約1,465万円
このケースでは、課税があるかないかで122万円ぐらいの開きが出てきます。
掛金にかかる税金
さらにiDeCoは運用益が非課税になることだけでなく、上限がありますが掛金も全額所得控除となります。
国民年金第1号被保険者が最大の掛金月々68,000円積み立てると、最小課税でも所得税5%、住民税10%(復興特別税も)がかかっているので、確定申告すると還付されます。
月額68,000円だと年間の掛金は81万6千円になるので、少なくても122,400円は税金が還付されます(高収入だともっと多く、収入によってはこの額に届かないことがあります)。
上で取り上げた毎月2万円を年利2%で40年積み立てると、以下のようになります。
- 元本960万円で利息が約505万円合計約1,465万円
- 掛け金が非課税なので少なくても144万円税金が還付
- 還付金も一緒に積み立てるとさらに220万円近く増えます
もちろんデメリットはありますよね。
iDecoのデメリットはしいてあげるならば、途中で解約が出来ない、など他にも条件があって自由度が低いこと。つみたてNISAのデメリットは、もしも損が出た時に“損益通算”が出来ないことです。
長期間積立・分散投資
金融庁の「高齢社会における資産形成・管理」報告書は、以下のように長期期間積立・分散投資の効果を説明しています。
長期・積立・分散投資による効果は、積立が長期であればあるほど、投資先を 分散すればするほど、収益がバラつきにくくなる特徴がある。 1985 年以降の各年に、毎月同額ずつ国内外の株式・債券に積立・分散投資したと 仮定し、各年の買い付け後、保有期間が経過した時点での時価をもとにして運用結 果を算出すると、保有期間が5年ではマイナスリターンも発生するが、保有期間が 20 年になるとプラスリターンに収斂し、さらにそのバラつきも小さくなる。
金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」
このように長期間の積立と分散投資をすれば、資産は増えていくと言えます。
積立金の引出し
つみたてNISAは、解約に制限がないのでいつでも引き出せます。
また、引出しに税金はかかりません(解約と引出しに時間のかかる場合、その間の利息には税金がかかります)。
iDeCoは、年金制度なので原則60歳まで引き出すことはできません。年金として受け取るときは「公的年金控除」を、一時金として受け取るときは「退職所得控除」を受けることができます。
年金として受け取る場合は、以下になります。
- 受取期間は5年以上20年未満の年単位(終身はありません)
- 受取は、年1回(12月)から年6回
iDeCoは、公的年金にプラスする制度あるいは退職金にプラスする制度と言えます。
次回は、つみたてNISAとiDeCoの元本割れやリスクについてお話しします。
▶ つみたてNISA/iDeCoの元本割れとその他のリスクを説明します
まとめ
- 〇非課税で貯めやすい
- 〇長期間の積立と分散投資でリスクを避ける
- 〇つみたてNISAは20年、iDeCoは最大40年間運用益が非課税
- 〇税金の差し引きがなくなるので資産形成に非常に有利
- 〇長期間の積立と分散投資をすれば、資産は増えていく