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昔は預金だけで数%もの利息が付いた時代もありましたが、貯金として預けているだけでは物価の上昇に備えることができなくなってしまいます。
将来の公的年金についても不安視する声が上がる中、自分で自分の資産を守り、人生のリスクに備えていく努力が必要となっているのです。
ただし、株などで運用するとなると、ある程度の投資資金や経験・知識・時間が必要です。投資にチャレンジしたくても損失の可能性を考えて、なかなか取り組めないという人も多いでしょう。
この記事では、できるだけリスクを抑えながら運用していく情報を集めました。安定した資産運用を可能にする、リスクの心配が少ない投資方法についてご紹介します。
資産運用の「リスク」と「元本保証」
まず、資産運用の「リスク」と、できるだけ安全に運用するための「元本保証」について確認しておきましょう。資産運用におけるリスクは3段階に分けられます。
ローリスク・ローリターン | 普通預金・定期預金など 債券・金投資 生命保険 |
ミドルリスク・ミドルリターン | 投資信託・ETF・REIT 外貨MMF ソーシャルレンディング |
ハイリスク・ハイリターン | 株式・先物取引・FX 仮想通貨 |
リスクとは、収益に関わる振れ幅の大きさであり、投資の世界では値動きが大きいほどリスクが高いと言われています。
リスクの幅は値上がりと値下がり、両方を含んでいます。つまり、リスクの高いものほど高いリターンを期待できると同時に、高い利回りを期待するなら、高いリスクを取らなければならないということになります。
なお、できるだけリスクを抑えた運用を希望する場合は、主に債券、公社債投資信託、貯蓄型保険など、リスクの低い金融商品を選択することになります。
資産運用の元本のリスクを考えるため、次の項目で「元本保証」と「元本確保」の違いについて確認していきましょう。
「元本保証」と「元本確保」
資産運用で投資する元本が保証されていることを「元本保証」といいます。
「元本保証」は運用期間中も元本が保証されていますが、一方の「元本確保」は満期の時点でのみ、元本が保証されることになります。
元本保証 | 元本確保 |
---|---|
投資元本が運用期間中~終了後も保証されている | ・満期時・運用終了後のみ、投資元本が保証される ・中途解約すると元本割れする可能性あり |
元本保証の例として、銀行預金の預金保険制度(ペイオフ)があります。
日本国内の金融機関に預けている預金は、仮にその銀行が破綻してもペイオフによって1000万円まで保証されます。
一方、元本確保の商品は、中途解約すると元本割れになる可能性があります。つまり、完全な元本保証を求めるなら銀行預金を選択することになり、それ以外の金融商品は、元本保証に近い特徴を持つ商品や、非常にリスクの低い投資方法、または元本確保型の商品ということになります。
リスクの少ない資産運用の要件とは
リスクが無く、元本も保証されていれば大安心ですが、それではリターンも期待できなくなります。
そのため、預金よりも良いリターンを期待する場合は元本確保型や低リスクの商品を選択していくことになります。
特に中途解約した場合でも損失の少ない商品を選ぶことで元本保証に近い運用を目指すこともできます。低リスク運用の前提として、以下のような項目を押さえておきましょう。
- 長期投資
- 運用資金が余裕資産である
- 分散投資をしている
長期投資とは、長い年数を掛けて金融商品を保有し続ける投資方法のことです。金融商品を長く保有していれば、価格が下がる時期があっても上昇する時期もあるため、全体としてリスクを軽減することができます。
また、金融商品を長期間保有することで複利効果も得やすくなります。そのため長期的な保有には、その資金がすぐには使う予定のない余裕資金であるかどうかがポイントとなります。
長期投資には、ある意味、資産の伸びを資産自体に任せるような面があるのです。
そして、「長期投資」とともに重要となるのが「分散投資」です。分散投資とは複数の投資先に投資することで、資産価値の変動リスクや衝撃を軽減する方法となります。
分散投資と「ポートフォリオ」
所有している金融商品の組み合わせを「ポートフォリオ」と言います。
多数の投資商品の中から価値変動要因が異なるものを選択して組み合わせることでリスクを回避し、自分の資産に合わせたポートフォリオを作成することができます。
外貨預金を例にすると、同じ国の通貨だけではなく、米ドル・ユーロ・英ポンド・豪ドルなど複数の外貨を併せ持つことでリスク回避につながります。
そして、投資商品の組み合わせの割合を変えていくことで積極的なポートフォリオに変えたり、リスクを回避する安定型のポートフォリオにするなど、方針を変えることもできます。
株式投資では値動きを注視しながら売買をするハイリスクな投資方法もありますが、最初に自分の資産に合ったポートフォリオを作成しておくことで、管理の手間がほとんどなく、時間を割かなくても長期的に利益が得られる安定型の資産運用が実現します。
元本保証に近い資産運用法
ここから元本保証に近い投資商品をご紹介します。誰でも安心して運用をスタートできるように、銀行の普通預金と比較して、安全性の高く、少しでも利回りのよいものをリストアップしています。
目的やリスク、運用年数を考えながら、ご自身に合った投資商品を探していきましょう。
個人向け国債
国債は国が発行主となる債券です。なかでも個人向け国債は、1口1万円で個人投資家も買いやすい金融商品となっています。
たとえば10万円分購入すると、満期(償還期限)に元金10万円+金利が償還される仕組みで、利払いは年2回行われます。
個人が購入できる国債には「変動10」、「固定5」、「固定3」の3種類があります。
名称 | 金利 | 満期 |
---|---|---|
変動10 | 金利が半年ごとに見直される | 満期10年 |
固定5 | 金利が固定されている | 満期5年 |
固定3 | 金利が固定されている | 満期3年 |
メリット・デメリット
発行元が国であるため、非常にリスクが低い商品だといえます。個人向け国債の場合は発行日から1年を経過すれば、いつでも中途換金が可能です。
ただし金利は固定金利型で0.05%ほど。個人向け国債は都市銀行、地方銀行、証券会社、ゆうちょ銀行、農協、信用組合、ネット銀行などほとんどの金融機関の窓口やオンラインで購入が可能です。
地方債
地方公共団体が発行する地方債は、自治体が個別に発行する個別債と複数の自治体が発行する共同債に分かれています。
発行団体のある地域に住んでいる住民のみが購入できる「住民参加型公募地方債」、一般的に公募される「全国型市場公募地方債(個別債)」があります。
メリット・デメリット
国債と同じで、購入すると満期に元本+金利が償還され、1万円単位から購入することが可能です。
ただし、10年債・20年債・30年債など長期間の運用となります。
利率は自治体により異なりますが、10年債は国債よりも金利が低く0.2%ほど。20年債・30年債については0.6%~0.7%など、比較的高めの利率で設定されています。
地方債も銀行、証券会社、信用金庫、ネット証券などから購入することが可能です。
社債(個人向け社債)
企業が発行している債券が社債です。社債は事業資金の調達のために発行され、購入者は満期まで保有することで元本+金利が償還されます。
元本保証ではないものの、会社の倒産などがない限り元本は償還されるため、元本についての保全性は比較的高いといえるでしょう。
社債には「普通社債」「転換社債」「ワラント債」の3種類があり、引受証券会社が発行します。一般的に売買されるのは「普通社債」となります。
社債の種類 | 特徴 |
---|---|
普通社債 | ・固定金利のついた一般的な社債 ・一定期間ごとに利払いあり |
転換社債 | 発行会社の株と交換する権利付きの社債 |
ワラント債 | 発行会社が新規で発行する株を購入する権利付きの社債 |
メリット・デメリット
1万円から購入できる社債もありますが、通常は10万円〜100万円単位で発行されます。また、個人向け社債の想定利回りは0.5%~1%前後です。
社債の例として、2017年3月のSBIホールディングス、ソフトバンクグループが発行した社債を見てみましょう。
- SBIホールディングス・・・2年満期で利率は0.5%
- ソフトバンクG・・・7年満期で利率は2.03%
国債に比べて利回りが高く、人気の高さから、社債は発行されるとすぐに売り切れる傾向にあります。
また、2020年7月にはソフトバンクGが負債を圧縮するために社債を買い戻す「買い入れ」を実施し、「今後も適宜買い入れを行なう可能性がある」と発表しています。(参照:日本経済新聞「ソフトバンクG、社債1676億円、買い入れ完了」)
公社債投資信託
「投資信託」とは、多くの投資者から集めた資金を一つにまとめて、ファンドとして運用する金融商品です。
投資の専門家である運用会社が国内外の株式や債券などに分散投資を行い、その運用成果が分配されます。
中でも公社債投資信託は、国債や地方債などの「公社債」のみで運用される投資信託を指します。運用先が公社債のみのため元本割れするリスクが小さいのが特徴です。
公社債投資信託の種類 | 特徴 |
---|---|
国内債券型 | 国内の公共団体が発行する債券のみで運用 |
外国債券型 | 国外の公共団体が発行する債券のみで運用 |
内外債券型 | 国内・国外の公共団体が発行する債券で運用 |
メリット・デメリット
公社債投資信託は、株式への投資はしないため、元本割れの可能性は低いといえます。
1万円程度から購入することができますが、公社債で運用するため、利回りは0.05%程度。定期預金と同程度になります。
日本の債券で運用する場合は安全性が高くリスクは低いと言えますが、海外の公共団体の債券が含まれる場合は変動リスクや為替の影響も受ける可能性があります。
つみたてNISA
つみたてNISAは、2018年1月からスタートした少額からの投資を支援する非課税制度です。
投資信託などの売買益や配当金に本来課税される20%分が、年間上限額40万円の範囲内で非課税となります。
つみたてNISAの非課税制度 | |
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対象額 | 新規投資額で毎年40万円が上限 |
対象期間 | 最長20年間 |
投資枠 | 最大800万円(毎年40万円×20年間) |
投資可能期間 | 2018年~2037年 |
投資信託は誰でも少額で始めることができ、ファンドそのものが国内外幅広く株式・債券を取り入れているため、手軽に分散投資が可能となります。
ファンドの種類が非常に多いのも特徴。しかも、つみたてNISAの対象商品は、手数料が低く、長期・分散投資に適した投資信託に限定されているため、投資初心者にとって利用しやすい仕組みとなっています。
証券会社の口座でつみたてNISAを設定することで非課税枠が適用されます。
投資信託での運用を始める際は、非課税枠の利用が可能なつみたてNISAを利用してみてはいかがでしょうか。証券会社により取扱っている投信商品が異なりますので、ご利用の証券会社のホームページ等でご確認ください。
「つみたてNISA」と「NISA」の比較
「つみたてNISA」と「NISA」は、どちらも売買益等が非課税となる制度です。NISAは毎年120万円を上限として5年間の運用益が非課税対象となります。
つみたてNISA | NISA | |
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非課税対象となる年間上限額 | 40万円 | 120万円 |
非課税対象期間 | 20年間 | 5年間(ロールオーバーにより最長10年間) |
取扱い商品 | 一定の要件を満たす投資信託商品 | 上場株式(REITやETF等を含む)、投資信託など |
口座開設時期 | 2037年まで | 2023年まで |
途中の引出し | いつでも可 | いつでも可 |
つみたてNISAと一般NISAはどちらか一方を選択し、1人1口座という制限はあります。
それでも払い出しや売却についてはいつでもできるため自由度が高く、利益部分が非課税となるメリットを享受できる方法です。
ただし、NISAの場合、売買で損失が発生したとしても、課税扱いの他口座の収益との損益通算ができないため、その点には注意が必要でしょう。
貯蓄型保険
貯蓄型の保険は、保険料払込期間終了後は満期金、または解約による解約返戻金を受け取ることができます。
保険としての保障と満期時・解約時の利息が見込めるというメリットがあります。
貯蓄型保険 | 特徴 |
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終身保険 | ・死亡保障あり ・解約返戻金あり |
個人年金保険 | ・満期に積み立てた資金を一時金、または年金方式で受取り ・死亡保険金は積み立ててきた額のみ |
養老保険 | ・設定する死亡保険金と満期保険金は基本的に同額 ・死亡保険金は全額支払われる |
学資保険 | ・契約者(親)の死亡保障あり ・満期時に所定の満期保険金 |
メリット・デメリット
貯蓄型保険のメリットは、解約返戻金や保険としての保障にあります。ただし元本確保型の商品のため、早い時期に中途解約すると解約返戻金の額が支払った保険料よりも少なくなる可能性があります。
一方で、保険は選択肢が非常に多く、プランの多さも魅力です。加入の際には保障内容や保険料の面など、十分検討の上で計画的に利用しましょう。
まとめ
今回は元本保証、もしくはそれに近い資産運用についてご紹介してきました。
完全な元本保証を希望する場合は銀行預金が確実ですが、リスクを抑えた金融商品を選択することで安定した利益を得ることも可能です。
様々な資産運用の方法を知り、まずは自分に合ったポートフォリオを作成していきましょう。
その中で、投資商品をしっかり比較したい、投資商品や貯蓄型保険に関するアドバイスが欲しいという場合は、https://at-seminar.net/などのセミナーを利用してみてはいかがでしょうか。
社会の動きや金融情勢、資産運用のリスクを学ぶことで自分の資産を守り、最適な運用方法を見つけていきましょう。