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昨今、テレビのコマーシャルやニュース、メディアなどで「人生100歳」と言われるように長寿時代を迎えています。
長生きできるのは大変素晴らしいことですが、一方で長寿時代を楽しく生きていくにはお金が必要になります。
2019年(令和元年)5月22日、金融庁で公開した「高齢社会における資産形成・管理」報告書(案)では、夫が厚生年金、妻が国民年金の平均世帯(年金モデル世帯)で95歳まで生きていくと65歳から受給する年金以外に約2,000万円不足すると指摘して大きな話題になり、長寿時代に向けた資産形成が注目されています。
その中でも、初めて始める長寿時代に向けた資産形成に、掛金も利益も非課税の個人型確定拠出年金「iDeCo」が注目されています。
iDeCoの基本
iDeCoは、簡単にまとめると 国民年金や厚生年金と組み合わせて、より豊かな老後生活を送るための制度です。
国民年金や厚生年金にプラスして年金を受給できる国民年金基金連合会が運営する私的個人年金制度で、加入は任意です。
加入の申込、掛金の拠出、掛金の運用の全てを加入者自身が行い、掛金とその運用益との積立合計額をもとに給付を受け取ることができます。
積立てた資金は年金として受け取ることが基本ですが、退職金のように一時金で受け取ることもできます。
また、万一の場合は、障害給付金あるいは死亡一時金を受け取れます。
個人型確定拠出年金「iDeCo」以外にも企業型確定拠出年金「企業型DC」もあります。
企業型DCは、企業が掛金を毎月積み立て(拠出)し、従業員(加入者)が自ら年金資産の運用を行う制度です。
加入者
iDeCoには、以下の方が加入できます。
- 国民年金第1号被保険者(農業者年金加入者、保険料免除者を除く)
- 国民年金第2号被保険者(公務員等も含む)
- 国民年金第3号被保険者(専業主婦・夫等)
掛金と限度額
掛金は、加入者個人が拠出します。
限度額は、以下の通りです。
- 第1号被保険者は、月額68,000円(国民年金基金の掛金、不可保険料を含む)
- 厚生年金基金等の加入者は、月額12,000円
- 企業型年金のみの場合は、月額20,000円
- 厚生年金基金・企業型年金なしの場合は、月額23,000円
- 公務員・私学共済制度加入者は、月額12,000円
- 専業主婦等第3号被保険者は、月額23,000円
年金受給開始年齢
iDeCoの年金受給開始年齢は通算加入期間により変わり、以下の通りです。
- 10年以上は、満60歳
- 8年以上10年未満は、満61歳
- 6年以上8年未満は、満62歳
- 4年以上6年未満は、満63歳
- 2年以上4年未満は、満64歳
- 1ヶ月以上2年未満は、満65歳
積立資産の受給方法
受給方法は、下記の3種類があります。
- 有期(5年以上20年以下)又は終身年金
- 一括して受け取る一時金
- 一部を年金、一部を一時金で受け取る併用
定年後に子供が大学に入学する時期になるなどの家庭では、教育資金の用意などにもiDeCoを活用できます。
iDeCoの注意
預金などは自分が必要な時にいつでも引き下ろすことができるメリットがありますが、iDeCoは、原則60歳まで引き出せない制限があります。
iDeCoは、国民年金や厚生年金のように給付額の確定(年ごとに調整があります)している「確定給付年金」と違い、「確定拠出年金」です。
その運用方法には、以下の違いがあります。
- 確定給付年金:給付額が決まっていて「日本年金機構」が運用
- 確定拠出年金:掛金が決まっていて「加入者個人」が運用(運用により給付額が変動)
個人が運用するのですが、この運用は対象金融商品を選ぶことで、その後は国民年金基金連合会が運用するので大変ではありません。
しかし、選んだ金融商品により積立資産は変動します。
増やすには、定期的に運用結果を見て成績が悪ければ商品を変えることが必要です。
iDeCoの節税
iDeCoの掛金・運用益は非課税です。
年金として受け取るときは「公的年金控除」を、一時金として受け取るときは「退職所得控除」を受けることができます。
年末調整のある人は、年末調整で掛金を申告すれば確定申告は不要です。
年末調整をしない方は、確定申告をして税金の還付を受けます。
もちろん運用益は非課税なので、年末調整や確定申告は不要です。
年金として受け取るとき
年金として受け取るときは国民年金と厚生年金合わせて課税されます。
以上をまとめると以下のようになり、iDeCoは税制面から非常に有利な制度です。
- 掛金が非課税
- 運用益が非課税
- 年金も公的年金控除で節税
- 一時金で受け取る場合も退職所得控除で節税
税制面から見ると一時金受け取りが大きな節税になります。
つみたてNISAとiDeCoのちがい
資産形成制度に、つみたてNISAがあります。
つみたてNISAとiDeCoには、以下に示す違いがあります。
制度のちがい
制度のちがいは、以下のようになります。
分類 | つみたてNISA | iDeCo |
---|---|---|
非課税枠年間 | 40万円 | 81.6万円 |
加入期間 | なし | 原則60歳まで |
積立金の引出し | いつでも可能 | 60歳以降 |
商品の特性 | 長期・積立・分散投資に適した投資信託 | 投資信託・預貯金・保険 |
加入年齢 | 20歳以上で上限なし | 20歳以上60歳未満 |
税制優遇度 | iDeCoより小(利益のみ) | NISAより大(掛金と運用益) |
どちらから始めたら良いか
つみたてNISAもiDeCoも有利な資産形成法ですが、どちらから始めるべきでしょうか。
iDeCoは、税制面から見ると掛金も非課税なので、働いている現役世代に有利です。しかし、原則60歳まで引き出せない制限がありので、高齢時代に向けた資産形成法と言えます。
そのため、以下の様な分類ができます。
- iDeCo:高齢時代に向けた掛金も非課税の資産形成制度
- つみたてNISA:いつでも引き出せるのでリスクに対応できる非課税制度
より使いやすくなる?
厚生労働省は、iDeCoをより使いやすい制度になるよう以下に示すような見直しを始めたとのです。
- 加入年齢を60歳から65歳に延長
- 60歳から70歳の受給開始期間の見直し
- 全会社員が加入可能に
- インターネット加入手続きに対応
2020年に改正案を国会に出す予定とのことです!