給与所得を例にとり、所得税がどのようにかかるかを紹介します。
会社員などの給与所得者は、所得税の計算、納付まで毎月支給される給与から天引きされて会社が納税します。
家族構成によったり保険などに加入すると税金が安くなり、最終的には、年末調整で正しい税金額に調整されます。
給与所得者以外は、自分で所得税額を計算して2月中旬から3月中旬(令和元年は、2月18日から3月15日までです)の間に税務署に申告する必要があります。
所得は収入金額から所得控除額(収入により異なる額)を差し引いた額なので、収入金額より小さな金額になります(収入金額と所得金額は異なります)。
税額の計算は、以下に示す手順で行います。
- 所得金額の計算
- 所得から差し引かれる金額(所得控除)の計算
- 税額を計算
所得税には、他の所得と合算し、税金を計算する「総合課税」と、一定の所得を他の所得と合算せずに分離して課税する「分離課税」があります。
ここでは、「総合課税」を取り上げて説明します
所得金額の計算
所得には、以下に示す種類があります。
- 個人事業主などの事業所得
- 不動産などの貸付で生じる不動産所得
- 源泉徴収されないなどの総合課税の利子所得
- 総合課税の配当所得
- 給与所得
- 年金や保険金、原稿料などの雑所得
- ゴルフ会員権、貴金属などの譲渡によるの総合課税の譲渡所得
- 賞金や懸賞当せん金などの一時所得
上記様々な種類がありますが、それぞれ計算方式は違います。
1つ1つ説明すると長くなってしまうので、ここでは多くの人が当てはまる「給与所得」を例に説明します。
給与所得とは、給与収入額に応じて、下表に示すように決まります。
給与等の収入金額 | 給与所得額 |
---|---|
650,000円未満 | 0円 |
1,619,000円未満 | 給与収入-650,000円 |
1,620,000円未満 | 969,000円 |
1,622,000円未満 | 970,000円 |
1,624,000円未満 | 972,000円 |
1,628,000円未満 | 974,000円 |
1,800,000円未満 | 給与収入÷4×2.4円 |
3,600,000円未満 | 給与収入÷4×2.8-180,000円 |
6,600,000円未満 | 給与収入÷4×3.2-540,000円 |
10,000,000円未満 | 給与収入×0.9-1,200,000円 |
10,000,000円以上 | 給与収入-2,200,000円 |
給与収入が1,000万円を超えると控除額が一定になるので所得が増えて税金がより重くなります。
ここでは給与所得を取り上げましたが、各々の所得を加えた額が課税対象の所得になります。
所得から差し引かれる金額(所得控除)の計算
給与所得から経費に相当する控除分が差し引かれて上に示した給与所得になりましたが、さらに所得から下記に示す所得控除が差し引かれます。
- 災害や盗難、火災などの保険金などの雑損控除(赤字は0円)
- 医療費から保険金と10万円を差し引いた医療費控除(最高200万円)
- セルフメディケーション税制による医療費控除特例(上記といずれか一方)
- 社会保険料控除(全額)
- 生命保険料控除(生命・個人年金・介護保険で各々最高4万円)
- 地震保険料控除(最高5万円)
- 寄附金控除(寄付金額から2,000円引いた額の40%)
- 寡婦・寡夫控除(37万円か38万円:所得制限あり)
- 勤労学生控除(37万円:所得制限あり)
- 配偶者特別控除(配偶者の所得金額で変わり最高38万円)
- 扶養控除(一般の扶養親族1人38万円)
- 誰でも対象の基礎控除(38万円)
税額を計算
所得金額(全収入金額)から所得控除額を差し引いた金額が、課税される課税所得金額になります。
この課税所得金額をもとに、税額は下表から計算します。
課税所得金額 | 税額 |
---|---|
0円 | 0円 |
1,950,000円未満 | 課税所得の0.05倍 |
3,300,000円未満 | 課税所得の0.1倍-97,500円 |
6,950,000円未満 | 課税所得の0.2倍-427,500円 |
9,000,000円未満 | 課税所得の0.23倍-636,000円 |
18,000,000円未満 | 課税所得の0.33倍-1,536,000円 |
40,000,000円未満 | 課税所得の0.4倍-2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 課税所得の0.45倍-4,796,000円 |
所得税は、超累進課税(課税対象が増えるほど、より高い税率を課する課税方式)なので以下に示すように収入が多いと税金は高額になります。
- 課税所得200万円は税金10万円
- 課税所得20,000万円は税金約520万円
- 課税所得30,000万円は税金約920万円
実際に納める税金
上で計算した税額から以下の控除額を差し引いた額(税額控除)が実際に納める税金になります。
- 総合課税の配当控除
- 住宅借入金等特別控除
- 政党等寄附金等特別控除
- 住宅耐震改修等特別控除
- 住宅特定改修等特別税額控除
- 認定住宅新築等特別税額控除
- 災害減免額
- 復興特別所得税額:控除でなく所得税額の2.1%加算
- 外国税額控除
- 所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額
上記控除額を差し引いた金額(復興特別所得税額は加算)がマイナスになるとその金額は還付されます。
既に支払った税額が支払う必要のある税額より大きい場合に、その差額が還付されるということで実際に支払う税金がマイナスになることはありません。(既に支払った税金の一部が戻ってくる場合があるということです)