マクロ経済スライドってなに?年金との関係性その仕組みとは

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年金関係のニュースなどで「マクロ経済スライド」という言葉を耳にしたことはないでしょうか?専門的な用語ですので、曖昧な解釈のまま頭に留めている方も多いかと思います。

マクロ経済スライドですが、年金と深い関わりがあるので、現役世代の方々は特にその内容を理解しておきましょう。

マクロ経済スライドとは

マクロ経済スライドとは平成16年(2004年)に年金制度の大幅な改革が行われた際、導入された仕組みの一つ。

そもそも年金の支給額とは物価・賃金の上昇に伴い、上昇する決まりでした。
しかし、少子化が進み現役世代1人が支える高齢者の人数が増える事となり、給付と負担のバランスが崩れ、最悪年金財政が危機に陥りかねません。

そこで、マクロ経済スライドにより、年金給付額の上昇を物価・賃金の上昇率以下に抑え、年金の給付水準を自動的に調整します。

仕組みについては後述で説明します。

年金制度で使われる経済用語

さてここまでで、「マクロ」や「スライド」などの用語が出てきたと思います。マクロ経済スライドを年金制度を長く維持するための仕組みと理解できていれば問題ないとは思いますが、年金制度について理解度を高めるために、それぞれの用語について解説します。

経済の状況を表す用語にはマクロ経済と反対語であるミクロ経済があります。

マクロ経済

マクロ経済は、政府、企業、家計を一括りにした、経済社会全体の動きのことで、国レベルの大きな視点で経済分析を行います。
個人や企業がまとめられることからマクロと呼ばれます。

ミクロ経済

ミクロ経済は、個人や個別の企業の動きを示し、個人の家計や企業を単位として経済分析を行います。経済を個人や企業のレベルで考えることからミクロと呼ばれます。

スライド

スライドは、先述でも少しお話ししましたが、年金支給額を実情にあうように変える制度のことです。年金では、以下のワードが使われます。

  • 物価の変動にあわせる「物価スライド」
  • 賃金の変動にあわせる「賃金スライド」
  • 経済状況にあわせる「マクロ経済スライド」

マクロ経済スライドが導入されるまでは、物価スライドが基本で、賃金スライドが物価スライドを上回る場合は、賃金スライドが実施されています。

マクロ経済スライドの仕組み

マクロ経済スライドは、年金の支給額の伸びを抑える仕組みであり、伸びを抑えるだけなので、年金受給額(実際に受け取る名目額)は、前年度を下回ることはありません。

本来、年金額は、物価や賃金の上昇率にあわせて増額(物価・賃金スライド)されます。しかし、マクロ経済スライドは、この上昇率からスライド調整率を差し引いた値に上昇率を抑える仕組みです。

スライド調整率は、公的年金加入者の減少率に平均余命の伸びを示す一定率をプラスして求めます。
年金支給額の伸び率は、マイナスになることはありません(0%で打ち止めになります)。

平均余命は、ある年齢の人々がその後何年生きられるかという期待値のことを指し、その年の出生児の平均余命が平均寿命です。
そのため、その年に生存している人は平均寿命よりも長生きします(平均では)

平成16年(2004年)改定時ではマクロスライドによる抑制は2023年で終わるはずでしたが、2014年時点では終了予定は43年まで延びています。

マクロ経済スライドの実施状況

マクロ経済スライドは年金の支給額は前年度を下回らない規定のため、デフレ時はマクロ経済スライドが実施されることはありませんが、発足した平成16年(2004年)から、デフレが続き2015年に実際に行われました。

2019年度の場合、物価と賃金の変動率が発動要件を満たしたため、年金額は前年度比0.1%増に抑制されます。

内訳としては、2019年度の物価の伸びが1.0%、賃金の伸びが0.6%。本来、年金を受給し始める人は「賃金の伸び」、受給中の人は「物価の伸び」を基に年金給付額の改定が行われますが、今回みたく共に伸び率がプラスで、物価の伸びが賃金の伸びを上回る場合、賃金の伸びの0.6%を基に給付額が改定されます。

また、2019年度のスライド調整率は、公的年金制度の被保険者の変動率(0.1%)+平均寿命の伸びを換算した一定数(-0.3%)=-0.2%。

それに、2018年度からは調整しきれなかった分を翌年度以降に繰り越す仕組みが導入されたため、2019年度の年金支給額は厚生年金で2018年度の減額分=-0.3%を加え、 -0.5%が適用されることになりました。

つまり、2019年の年金給付額は「賃金の伸び(0.6%)-抑制分(0.5%)=0.1%」のプラス改定となっています。

厚生年金を受け取る夫婦2人のモデル世帯でみると227円増の月額22万1504円になり、自営業者などが入る国民年金では、満額支給で1人67円増の月額6万5008円となります。

年金受給額はマクロ経済スライドの実施が少ない(2019年度で2回)ことから、現役世代の所得に対する年金の水準を示す所得代替率は2004年度に59.3%でしたが、2014年度に62.7%に上昇しています。

会計検査院の試算では、マクロ経済スライドが2004年度から毎年発動されたとすると、国の負担が累計3.3兆円削減できたとしています。

政府は最悪(デフレが続いても)でも所得代替率50%を維持すると宣言しています。今後マクロ経済スライドは過去の見送り分も含めて実施される可能性が高い見通しで、以前に比べて、年金受給額の伸びは少なくなります。

2019年の実施に加えて2020年も実施される見通しです。

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