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年金は、老後生活を送る上で重要な資金です。
基本的には個人(国民年金と厚生年金)と雇用者(厚生年金)が保険料を負担します。
国民年金と厚生年金の厚生基礎年金の保険料は、国が税金から同額を負担しています(国と折半)。
加えて国は、日本年金機構事業運営費交付金を日本年金機構に出して年金制度の運用を支えています。
令和元年、10月から消費税が8%から10%にアップします。
低い年金支給額の方には、国から年金生活者支援給付金が給付されます。このように、保険料で賄われていると思われている年金制度に巨額の税金が投入され、年金制度を支えています。
年金はもらえなくなるのではと心配されている若年層の方も、年金に加入しなければ税金を支払うだけで戻ってくることはありません(納税額の年金負担分についてです)。
国民年金・厚生基礎年金保険料の税金負担
税金(国庫負担)による国の国民年金・厚生基礎年金保険料の負担は、一定額でなく払い込まれた保険料と同額です。
年金制度を維持するために、年金加入者(主に厚生年金加入者)を増やす方策が議論されていますが、20歳から60歳までの加入期間を延ばす議論はあまりありません(厚生年金は70歳までです。
国民年金、厚生年金とも加入期間が不足する場合は延長できます)。
一つには、加入期間を延長すると税金の負担が増えることがありそうです。
厚生労働省の「厚生年金及び国民年金の財政見通し」(2019年8月27日)によると年金保険料と税金負担分は、以下のようになっています。
厚生年金
2019年の厚生年金の保険料総額と税金負担は以下のようになっています。
- 保険料収入は、37.2兆円
- 税金負担は、10.8兆円
厚生年金は高齢基礎年金と高齢厚生年金から構成されていますが、税金負担があるのは高齢基礎年金だけです。
国民年金
2019年の国民年金の保険料総額と税金負担は以下のようになっています。
- 保険料収入は、1.3兆円
- 税金負担は、1.9兆円
国民年金については、税金負担額が保険料収入を超えています。
これは、下に述べる保険料免除制度などで保険料収入を超えた税金負担があるなどによります。
日本年金機構事業運営費交付金
日本年金機構事業運営費交付金制度は、平成21年度から始まりました。
事業の終了は、規定されていません。
制度の内容
日本年金機構が行う以下に示す厚生年金保険事業及び国民年金事業に必要な資金を交付する制度です。
- 適用の促進
- 保険料等収納対策の推進
- 年金給付の迅速な決定及び正確な支給
- オンラインシステム運用及び見直し
- 年金相談の充実・情報提供の推進
税金投入額
税金投入予算額は、以下のように推移しています。
- 平成26年度:1,461億21百万円
- 平成27年度:1,502億95百万円
- 平成28年度:1,510億99百万円
- 平成29年度:1,594億50百万円
- 平成30年度:1,851億04百万円
年金生活者支援給付金
年金生活者支援給付金は、消費税率引き上げに際して、年金を含めても所得が低い方の生活を支援するために、年金に上乗せして支給する制度です。
消費税率が現行の8%から10%に引上げとなる2019年10月1日から施行され、初回の支払い(10月分・11月分)は2019年12月中旬となります(年金は2ヵ月分を隔月支払い)。
令和元年度の基準額は、年間6万円です(金額は加入期間により変わります)。
支給要件
この給付金は、以下の要件を全て満たす方が受給できます。
- 65歳以上の老齢基礎年金の受給者
- 前年の年金収入とその他所得が老齢基礎年金満額相当(約78万円)以下
- 同一世帯の全員が市町村民税非課税
前2つの要件を満たす方は多いと思われますが、3番目の要件が厳しく、受給者は限られます。
受給額
受給額は、以下に示す額の合計額になります。
480月は、20歳から60歳までの全加入期間です。
- 5,000円X保険料納付済月数/480月
- 10,800円X保険料免除月数/480月
基準となる金額は、今後物価動向により見直されます。
受給額の例を以下に示します。
納付済期間 | 免除期間 | 支給月額 | 年金月額 | 合計月額 |
---|---|---|---|---|
480月 | 0月 | 5,000円 | 65,000円 | 70,000円 |
240月 | 0月 | 2,500円 | 32,500円 | 35,000円 |
360月 | 120月 | 6,450円 | 56,875円 | 63,325円 |
240月 | 240月 | 7,900円 | 48,750円 | 56,650円 |
保険料免除制度
保険料免除制度は、所得が少なく本人・世帯主・配偶者の前年所得が一定額以下の場合や失業した場合など、国民年金保険料を納めることが経済的に困難な場合に保険料の納付が免除される制度です。
申請が必要で審査があります。
免除される額は、全額、4分の3、半額、4分の1の4種類があります。
保険料を免除された期間は、老齢年金を受け取る際に通常の年金の1/2を受け取れます。
この1/2の額は税金負担額ですので、加入者の年金保険料からの負担はありません。
手続きをしないと、この金額は受け取れません。
手続きをすると保険料を支払わなくても、国負担分に相当する年金額が増えます。