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生命保険と地震保険の保険料は、所得控除の対象になります。
健康保険や国民年金の保険料を支払うと「社会保険料控除」として所得控除を受けることができますが、民間の生命保険や地震保険の保険料についても、いざという時のための備えを自分自身で行なっているということで、税負担を減らしてもらえるのです。
生命保険料・地震保険料を支払っている人は、必ず利用しておきたい制度です。
生命保険料控除とは
生命保険料控除とは、保険料を支払うとその保険料に応じて一定金額がその年の所得から控除される制度です。対象となるのは、以下の保険料です。
- 生命保険料
- 介護医療保険料
- 個人年金保険料
これらの保険料を支払っている人は、申告を行うことでこの制度を利用することができ、所得税や住民税を軽減することができます。
控除を受けるためには、いくつかの要件を満たしている必要があります。各控除の対象となるための要件を見ていきましょう。
生命保険料控除の要件
一般の生命保険料控除の要件
生命保険料控除の要件を満たすためには「保険金受取人は誰になっているか?」がポイントになります。
- 保険金受取人:本人か配偶者、その他一定の親族
- 対象となる契約:生命保険会社、旧簡易生命保険、農協等との生命共済など
個人年金保険料控除の要件
個人年金保険料控除の対象となるのは、以下の要件を満たす契約です。
- 年金受取人:本人か配偶者で被保険者と同一人
- 払込期間:払込期間が10年以上(一時払契約は対象外)
- 確定年金・有期年金:年金支払開始日の年齢が60歳以上で支払期間が10年以上
税制適格特約のセットが必要で、セットされていないと一般の生命保険控除の対象になります。
介護医療保険料控除の要件
介護医療保険料控除の対象となるのは、以下の要件を満たす契約です。
- 保険金受取人:本人か配偶者、その他一定の親族
- 平成24年1月1日以後の契約で医療・介護による支払保険
貯蓄型保険や傷害保険、海外の保険会社と国外で契約した保険、5年未満の保険期間の契約は対象外です。
生命保険料控除制度の控除額
生命保険料控除制度を利用することで、
- 所得税
- 住民税
の課税対象となる所得金額から一定の金額が控除されます。控除金額の計算方法は支払った保険料によって異なりますが、上限は
- 新制度:所得税12万円・住民税7万円
- 旧制度:所得税10万円・住民税7万円
となっています。
生命保険料控除の控除対象となる保険料は、実際に払込んだ保険料(正味支払保険料)です。配当金などは含まれません。また、支払期日が到来した保険料であっても、実際に払込んでいない分は含まれません。
ただし、自動振替貸付により保険料の払込に充当した金額は、実際に払込んだ保険料に含まれます。
生命保険料控除の制度は、平成24年から改正されています。そのため、平成24年1月1日以後の契約(新保険)とそれ以前の契約(旧保険)で控除額の適用限度額が異なるので注意して下さい。
新制度の生命保険料控除額
新制度における所得税の生命保険料控除額の計算方法は次のようになっています。
払込保険料 | 控除額 |
---|---|
20,000円以下 | 全額 |
40,000円以下 | 年間払込保険料×0.5+10,000円 |
80,000円以下 | 年間払込保険料×0.25+20,000円 |
80,000円超 | 一律40,000円 |
新制度に置ける住民税の生命保険料控除額の計算方法は次のようになっています。
払込保険料 | 控除額 |
---|---|
12,000円以下 | 全額 |
32,000円以下 | 年間払込保険料×0.5+6,000円 |
56,000円以下 | 年間払込保険料×0.25+14,000円 |
56,000円超 | 一律28,000円 |
旧制度の生命保険料控除額
旧制度における所得税の生命保険料控除額の計算方法は次のようになっています。
年間払込保険料 | 控除額 |
---|---|
25,000円以下 | 全額 |
50,000円以下 | 年間払込保険料×0.5+12,500円 |
100,000円以下 | 年間払込保険料×0.25+25,000円 |
100,000円超 | 一律50,000円 |
旧制度における住民税の生命保険料控除額の計算方法は次のようになっています。
年間払込保険料 | 控除額 |
---|---|
15,000円以下 | 全額 |
40,000円以下 | 年間払込保険料×0.5+7,500円 |
70,000円以下 | 年間払込保険料×0.25+17,500円 |
70,000円超 | 一律35,000円 |
新・旧保険契約がある場合
新保険と旧保険がある場合は、どちらの保険料控除を申告しても構いません。
ただし、最高限度額は、12万円(住民税は7万円)になります。新・旧生命保険料、介護医療保険料、新・旧個人年金保険の区分は、生命保険会社等が発行する証明書に記載されています。
地震保険料控除とは
地震保険料控除とは、特定の損害保険契約(火災保険など)に係る地震等損害部分の保険料や掛金を払込むと、その金額に応じて一定金額がその年の所得から控除される制度です。
なお、地震保険は単独では加入できません。必ず、火災保険などの損害保険契約とセットで加入することになっています。
対象となる地震保険
本人や生計を一にしている配偶者・その他の親族が所有している居住用家屋・生活用動産を保険や共済を目的とする契約で、地震、噴火または津波等を原因とする火災、損壊等による被害額を保障する保険金や共済金が支払われる契約が対象です。
地震保険料の控除額
地震保険料控除も、生命保険料控除と同様に
- 所得税
- 住民税
それぞれの課税所得金額から一定の金額が控除されます。
地震保険料控除の控除額の計算方法は以下のようになっています。
払込保険料 | 所得税控除額 | 住民税控除額 |
---|---|---|
50,000円以下 | 払込保険料全額 | 払込保険料の半額 |
50,000円超 | 一律50,000円 | 一律25,000円 |
生命保険料控除・地震保険料控除を申告するには
生命保険料控除は、支払えば自動で控除されるものではありません。
申告しないともったいない制度ですので、生命保険料・地震保険料を支払っている人は必ず申告しましょう。
会社員と自営業で申告の方法が少し異なりますが、共通して必要になるのが
- 生命保険料控除証明書
- 地震保険料控除証明書
です。これらは、保険会社から送付されます。申告の時期まで保管しておきましょう。誤って破棄してしまった場合は、再発行してもらえる場合もあるので問い合わせてみて下さい。
会社員の場合は年末調整で
会社員の場合は「給与所得者の保険料控除申告書」に必要事項を記入し、「生命保険料控除証明書」「地震保険料控除証明書」を添付して年末調整の申告と一緒に提出します。
「給与所得者の保険料控除申告書」は国税庁ホームページで入手することができます。
自営業の場合は確定申告で
自営業の場合は、確定申告のときに所定の欄に保険料の支払額を記入し、「生命保険料控除証明書」「地震保険料控除証明書」を添付して提出します。