年金制度が大きく改変された「100年安心年金」はどんなことをしたの?

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前回の内容:年金制度改革について。なぜ改革が必要なの?

年金制度は、平成16年(2004年)に大きく改正されました。
100年安心は、厚生労働省が年金財政の検証(年金支出と国庫負担を含む年金保険料の収支推計)をおおむね100年間行うことに由来します。

収支推計は、以下のようになっています。

  • 第1期(2010年)から第5期までは保険料収入が年金支出を上回る
  • 第6期から第10期(2105年)までは年金支出が保険料収入を上回る
  • 10期間を通してみれば収支が等しくなる(収支相等)

これにより、厚生労働省と政府は、年金財政は安定していると主張しています。

一時期『老後2000万円問題』というワードを耳にしました。いくら年金が安心な制度とはいえ、年金だけに頼るのは将来的にリスクが大きいのではないでしょうか。

年金のリスクは、思い描くシニアライフプランによって変わってきます。まずは将来設計をしてみましょう。

年金改革法の概要

平成16年の制度改正は、今後急激に進行する少子高齢社会を見据えて、安心できる年金財政のフレームワークを導入するとしています。
主な改正点を以下に示します。

  • 上限を固定した上での保険料の引上げ
  • 国民年金(基礎年金)国庫負担の2分の1への引上げ
  • 保険料積立金の活用
  • 給付水準を自動調整する「マクロ経済スライド」の導入

この他に、年金財政の5年ごとの見直しや生き方、働き方の多様化に対応した制度の構築も含まれています。それぞれ詳しく説明していきます。

上限を固定した上での保険料の引上げ

以下に示すように、年金保険料の引き上げが行われます。

国民年金

月額保険料を平成17年4月から29年4月まで、毎年280円引上げられ、平成29年度以降は、16,900円の水準(平成16年度価格相当額)に固定されます。

厚生年金

月額保険料を平成16年10月から毎年0.354%ずつ引上げ、平成29年度以降は18.30%になります。保険料は労使折半なので、個人の負担は半分です。

平成17年〜29年まで保険料が上がっていますが、将来的に受給できる金額が増えることはありますか?

保険料が上がるのは、長期的な給付と負担の均衡を考慮して持続可能な財源を確保するためなので、受給できる金額が将来増えることは考えにくいでしょう。

基礎年金国庫負担の2分の1への引上げ

平成16年度以降平成21年度までに、これまで3分の1であった基礎年金国庫負担を2分の1に引上げる決定がされています。

年金制度は世代間の支えあえが基本ですが、基礎年金保険料の2分の1は、納税者全員で支えることになります。

そのため、保険料を未納して年金を受給できなくても、国庫負担分の保険料の分担は必要になるので保険料の未納には注意しましょう(期間は10年に限定されますが追納はできます)。

保険料積立金の活用

概ね100年間で財政均衡を図る方式とし、※財政均衡期間の終了時に給付費1年分程度の積立金を保有することとして、積立金を活用し後世代の給付に充てる方策です。

財政均衡期間とは、公的年金の財政において、収入と支出のバランスをとる期間の事を指します。

年金制度は世代間の支えあえが基本ですが、当初、第1期から第5期は保険料収入が年金支出を上回る見通しであることから、その差額を活用(利率の高い株式投資割合の引上げなどの運用の見直し)し年金財政を安定させる方策です。

年金積立金の管理運営を行う独立行政法人「GPIF」が平成18年4月1日設立されました。

給付水準を自動調整する「マクロ経済スライド」の導入

マクロ経済スライドは、社会全体の保険料負担能力の伸びを反映させることで、給付水準を調整する仕組みです。

ただし、年金の名目額が下限で調整されるとしても名目額を下回らないように調整されます(年金受給額が減額になることはありません)。インフレ時に、年金支給額をインフレ率を下回るようにスライド調整率を設定するのが基本です。

スライド調整率は、2025年度までは平均年0.9%程度としていますが、年金支給額は減額になりませんが、その価値が減る可能性があります。

名目値は、実際に市場で取り引きされている価格に基づいて推計された値で、普段私たちが目にする金額そのものです。そのため、インフレ・デフレによる物価変動の影響を受けます。

これに対して実質値という言葉がありますが、実質値は、その年の物価の上昇・下落分を取り除いた値です。

厚生年金の標準的な年金世帯の給付水準は、調整されても現役世代の平均的収入の50%を上回るとしており、平成26年度の所得振替率は、62.7%になっています。

年々人口が減少していますが、マクロ経済スライドなら影響は出ないのでしょうか?

現世代が支払う保険料を今の年金受給者への支払いに充てる制度なので、人口減少ということは、制度が崩壊することはないでしょうが、それなりの影響はあると思います。

生き方、働き方の多様化に対応した制度の構築

年金制度が、生き方、働き方の多様化に対応した制度となるように以下に示すような制度見直しが行われます。

在職老齢年金制度の見直し

〇60歳台前半の厚生年金在職老齢年金制度の見直し(一律2割の支給停止措置の廃止
〇70歳以上の厚生年金老齢厚生年金の給付調整の実施
〇65歳以降の老齢厚生年金の繰下げ制度の導入

短時間労働者への厚生年金の適用

〇法施行後5年を目途に、短時間労働者への厚生年金の適用について必要な措置(手続き)を行うとしています。

次世代育成支援の拡充

〇育児休業をとった時の保険料免除措置の拡充(1歳未満→3歳未満)
〇勤務時間短縮等により標準報酬が低下した時の年金額計算上の配慮措置

女性と年金

〇第3号被保険者期間の厚生年金の分割
〇離婚時の厚生年金の分割
〇遺族年金制度の見直し

障害年金の改善

〇障害を有しながら就労したことを年金制度上評価し、障害基礎年金と老齢厚生年金の併給が可能になります。

年金と労働はリンクしているようにも感じます。特に大きな病気もなければ70歳まで働いて、70歳から年金を受け取るほうがお得でしょうか?

働き方によります。

上記の事柄が「100年安心年金」の概要となります。

「100年安心」のスローガンは今でも記憶に新しいですよね。こうした経緯を踏まえ、直近の年金2000万不足問題などが話題になるたびに、100年安心のスローガンが引き合いに出されています。

次回は、平成28年の年金改革法「公的年金制度の持続可能性の向上」についてお話しします。

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