目次
この記事の監修

石井 治彦(いしい はるひこ) ファイナンシャルプランナー
新光FPサービス
教育プラン診断士 ライフプランナー FP技能士 住宅ローンアドバイザー 外国運輸金融健康保険組合元理事 外国運輸金融健康保険組合年金基金運用元委員
資産形成、資産運用、教育関連を得手として活躍している。
趣味は犬の散歩(健康管理もかねて)・料理(祖父、父、兄がプロ)。
【年金編10話】年金の支払いに困った時に役立つ【免除・猶予期間の制度】を理解しよう
日本の年金制度は「国民年金」と「厚生年金」の2階建て構造になっています。
このうち、1階部分となる「国民年金」は、日本国内に住む20才以上60才未満の全ての人の加入が義務付けられている保険で、2階部分となる「厚生年金」は、会社員などの第2号被保険者が加入する保険です。
自営業などの会社に勤めていない人(第1号被保険者)や、専業主婦の人(第3号被保険者)は、公的には国民保険でしか老後の資産を蓄えておくことができないの?と不安に感じている人もいるのではないでしょうか。
実は、国民年金には、基本となる保険料に上乗せして支払うことで将来の受給額を増やすことができる制度が用意されています。
付加年金
付加年金は、第1号被保険者(自営業者等)だけが加入できる制度です。
毎月付加保険料400円を納付することで、65才から「200*付加保険料納付期間」の年金を受け取ることができます。
給付額の「200*付加保険料納付期間」というのは、2年で元が取れる金額設定です。
例えば40年間付加保険料を払込むとすると、
- 保険料…400円×480月(40年間)=192,000円
- 受給額…200円×480月(40年間)=96,000円(年額)
となり、
- 40年間で払い込む保険料は192,000円
- 65才以降に受け取れる年金が年間96,000円増額
年額が96,000円増えるので、仮に100歳まで生きると合計で336万円年金を受け取れる計算になります。
付加年金のメリット
付加年金は、月々400円の積立で老後の年金を増やすことができる制度です。
少額で確実に受給金額を増やすことができるため、何か少しでも老後に向けて資産の確保を始めたいと考えている第1号被保険者の人におすすめです。
付加年金のデメリット
付加年金にはデメリットもあります。
付加年金の受給額は物価や賃金が上昇しても連動しない定額制のため、将来インフレが進むと期待していた価値が得られない可能性があります。
また、付加年金は遡って加入することができない点にも注意して下さい。
国民年金基金
付加年金の他にも、給付額を上乗せできる仕組みがあります。
国民年金基金は、第1号被保険者を対象に国民年金に上乗せして利用できる年金制度です。第2号被保険者にとっての厚生年金のような位置付けです。
厚生年金は所得金額によって自動的に納付金額が決まるのに対して、国民年金基金は加入者が任意で納付金額を設定することができます。
国民年金基金の種類
国民年金基金には、以下に示す種類があります。
- A型:65歳支給開始で15年間保証の終身年金
- B型:65歳支給開始で保証期間なしの終身年金
- Ⅰ型:65歳支給開始で15年確定年金(15年間保証。以下同様)
- Ⅱ型:65歳支給開始で10年確定年金
- Ⅲ型:60歳支給開始で15年確定年金
- Ⅳ型:60歳支給開始で10年確定年金
- Ⅴ型:60歳支給開始で5年確定年金
国民年金基金には複数口加入できますが、1口目はA型かB型です。
国民年金基金の保険料と年金額
保険料と年金額は、加入年齢と性別により変わります。
以下に1口目の保険料と年金月額の目安を示します。
加入年齢 | 年金額 | 男性A型 | 男性B型 | 女性A型 | 女性B型 |
---|---|---|---|---|---|
20歳 | 2万円 | 7,110円 | 6,370円 | 8,280円 | 7,940円 |
30歳 | 2万円 | 10,740円 | 9,650円 | 12,500円 | 12,010円 |
40歳 | 1.5万円 | 13,335円 | 12,045円 | 15,510円 | 14,925円 |
50歳 | 1万円 | 18,150円 | 16,510円 | 21,100円 | 20,380円 |
月々の保険料は、最大で68,000円までです(確定拠出年金に加入している場合はその掛金を含みます)。
民間の年金保険の税額控除は最大4万円ですが、国民年金基金は全額社会保険控除の対象になるので非常に有利です。
年金の繰り上げ受給と繰り下げ受給
年金は65歳から受給するのが基本ですが、60歳から70歳にかけて受給開始時期を変えることができます。これは、国民年金と厚生年金に共通の制度です。
繰り下げ受給にすれば、受給する金額を増やすことが可能です。
繰り上げ受給と繰り下げ受給、それぞれについて解説します。
繰り上げ受給
年金を65歳になる前に受給すると、65歳までの月数に0.5%ずつ減額されます。
60歳から受給すると30%の減額になり、減額が一生涯続きます。年金を早く受け取れるメリットはありますが年金額が一生涯減るので、一般的には避けるのが賢明です。
繰り下げ受給
年金を65歳を超えて受給すると、60歳を超えた月数に0.7%ずつ増額します。
70歳から受給すると42%の増額になり、増額が一生涯続きます。年金を増やすのに有効ですが、以下のデメリットもあるのでよく考えてから判断してください。
- 受給が遅れるのでその期間の資金手当が必要
- 受給が遅れるので受給期間が短くなる可能性
- 加給年金の受給も遅れるので年下の配偶者がいると不利
- 税金や社会保険料も増えるので手取りは42%より減少
国民年金の追納と後納
国民年金は保険料の免除制度がありますが、その期間、国庫負担分を除いた2分の1の年金が減額されます。
免除された保険料は、10年間まで追納できます。また、学生など保険料の納入猶予制度があります。
猶予された保険料は年金に反映されないので、10年以内に追納しましょう。
保険料を支払わなかった場合も、2年間の時効があります。
2年以内ならば後納でき、60歳を超えても支払えます。
5年以上の未納期間がある場合、年金を増やすということは難しいでしょうか。
未納期間と年齢などで状況は変わりますが、難しいことではありません。しかしながら一概には解説できません。
まとめ
- 年金は増やせる
- 付加年金は、第1号被保険者(自営業者等)だけが加入できる制度
- 付加年金は2年で元の取れる、非常に有利な制度
- 付加年金は貯金・預金と同じくインフレには弱い制度