平成28年年金改革法「公的年金制度の持続可能性の向上」




前回の内容:年金制度が大きく改変された「100年安心年金」はどんなことをしたの?

平成26年(2014年)の見直しで、年金法の改正「平成28年年金改革法」が行われました。

平成16年の改正は、前回の内容でお話ししましたが、大きく示すと以下になります。

  • 基礎年金保険料の国庫負担金の2分の1への引上げ
  • 給付水準を自動調整する「マクロ経済スライド」の導入など

この制度改革により、100年安心年金と言われました。

基礎年金(国民年金と厚生年金)保険料の国庫負担金の2分の1への引上げは、実施され、マクロ経済スライドは、物価下降(デフレ)時には実査されないこともあり一部実施にとどまっています。

平成28年12月には、公的年金制度の持続可能性の向上を図るための国民年金法等の一部を改正する法律「平成28年年金改革法」が成立しました。

平成28年年金改革法の概要

この改革法の主旨は、以下をかかげています。

  • 少子高齢化が進む中で、公的年金制度のメリットをより多くの方が享受できるようにする
  • 制度の持続可能性を高める
  • 将来世代の年金水準の確保を図理、将来的にも安心な年金制度を構築する

この主旨を実現するための年金改革法の概要を以下に示します。

  • 短時間労働者への被用者保険の適用拡大の促進
  • 国民年金第1号被保険者の産前産後期間の保険料の免除
  • 年金額の改定ルールの見直し
  • 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の組織等の見直し
  • 日本年金機構の国庫納付規定の整備

それぞれ詳しく見ていきましょう。

短時間労働者への被用者保険の適用拡大の促進

被用者保険は企業に雇用された社員(従業員)や公務員の入る保険で、以下の種類があります。

  • 健康保険(組合保険と協会けんぽ)
  • 雇用保険
  • 労災保険
  • 厚生年金保険など

改正までは、「従業員501人以上」の企業規模要件がありましたが、500人以下の企業も、労使の合意に基づき、企業単位で短時間労働者への適用拡大を可能にしようとする主旨です(公務員は規模に関係なく全員加入です)。

平成28年10月からは、501人以上の企業等で働く短時間労働者へ以下に示す適用拡大が開始されます。

  • 従業員数501人以上の企業に勤務
  • 週20時間以上働く
  • 賃金が月8.8万円以上など

この改定は、平成29年4月から実施されています。

国民年金第1号被保険者の産前産後期間の保険料の免除

次世代育成支援のため、国民年金第1号被保険者の産前産後期間の保険料を免除し、免除期間は満額の基礎年金が保障されます。
このため、国民年金保険料が月額100円程度引上げられます。

国民年金第1号被保険者とは、厚生年金加入者(第2号被保険者)とその被扶養配偶者(第3号被保険者)を除く20歳以上60歳未満の人全員のことです。

厚生年金加入者には、すでに実施されている制度です。

この改定は、令和1年4月から実施されています。

年金額の改定ルールの見直し

公的年金制度の持続可能性を高め、将来世代の給付水準を確保するため、以下に示す主旨の年金額の改定が行われます。

マクロ経済スライド

平成16年改革法で導入されたマクロ経済スライドは、物価下落時には適用されませんでした。

これが、賃金・物価上昇の範囲内で前年度までの未調整分を含めて調整されることになりました。
名目額(実際に受け取る年金額)は、前年度を下回りませんが、その価値を示す実質額は下がる(物価上昇時)ケースが出てきます。

受け取る年金額が下がることはないのですが、物価や賃金の伸びほど年金が増えない仕組みです。

物価下落時に適用されない場合は、物価上昇時にさかのぼって適用されますが、年金受給額が前年度より減ることはありません。

この改定は、平成30年4月から実施されています。

物価スライドに加えて賃金スライドの追加

賃金変動が物価変動を下回る場合に賃金変動に合わせて年金額を改定する仕組みです。
これまで、賃金スライドは凍結されていましたが、この改定で強化されます。この改定は、令和3年4月から実施されます。

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の組織等の見直し

以下に示すGOIPの組織の見直しが行われます。

  • 独任制から合議制への転換
  • 意思決定・監督と執行の分離

運用方式にも、以下の追加が行われます。

  • リスク管理の方法の多様化(デリバティブ取引の方法の拡大)
  • 短期資金の運用方法の追加(コール資金の貸付等を追加)

デリバティブ取引は、株式などそのものではなく、それらを将来売り買いする「契約」や「権利」などを商品化した取引です。

相場の乱高下で損失がふくらむのを避けるために考えられた仕組みです。
コール資金は、金融機関や証券会社の間で貸借される、きわめて短期の大口資金です。

この改定は、平成29年10月(一部平成29年3月)から実施されます。

日本年金機構の国庫納付規定の整備

日本年金機構に不要財産が生じた場合における国庫納付に係る規定が追加整備されます。

この改定は、平成28年12月27日から実施されます。