年金制度の仕組み|人口減の中どんな制度で維持しているのか




人口減、少子高齢化、さらには人生100年時代。リタイア世代が増え、現役世代が払っている年金額も、大きくなっているでしょう。

年金受給についてはこちら(年金受給できる時期について|繰り上げ・繰り下げ受給は可能)で説明しましたが、このような状況で年金制度は維持できるのでしょうか。

今回は年金制度の仕組み、なぜ維持できるのか、現役世代減少の対策についてお話しします。

年金制度は世代間の支え合い

年金制度は、現役世代が支払った保険料を高齢者に年金として給付する「世代間での支え合い」が基本です。 20歳〜60歳まで保険料を払い込み、65歳から年金を受給します。

しかし、高齢者の寿命が延び子供の誕生が減少する少子高齢時代ではこの制度を維持するのは困難になっていくと予想できます。

現在の年金制度は、以下に示す仕組みで運用されています。

  • 現役世代の保険料を高齢者に給付する「世代間での支え合い」
  • 保険料は、公費と加入者で折半「保険料の半分は税金で国庫負担」
  • 保険料の一部を積み立て将来への備え

*民間の年金保険制度は加入者が保険料を積み立てて、ある年齢に達すると年金として受給します。 積み立てた保険料に保険会社の運用で得られた利益が加わり、年金として戻ってくる仕組みです。

*民間年金保険…民間金融機関が運営。「個人年金保険」とも言います。

一方で公的年金制度は、「世代間での支え合い」を基本としているところが、民間の年金保険と異なる点です。

民間の年金保険との違いは大きく2つ

民間の年金保険と年金制度の仕組みには以下の違いがあります。

  • 民間年金保険の「保険料」と「年金額」および給付期間は加入時に確定
  • 年金制度の「保険料」と「年金額」はその時代の経済状況で変動

民間年金保険は加入時で保険料と年金額が決まるので、確実と考えられるかもしれませんが以下の不安要素もあります。

  • 将来金利が上がっても年金額は増額しないで固定
  • 将来インフレになっても年金額は増額しないで固定

現在のような低金利・デフレ時代では20年・30年先の高齢時代に本当に安心なのかの不安があるため、ある程度先が見通せ、資金の準備のできる50歳ぐらいで加入する民間年金保険が一般的になっています。

ある意味、余裕のある人が加入する保険と言えます。

年金制度は予想しにくい将来にも対応できる

民間年金保険に比べて、日本に住所のあるすべての人が加入する年金制度は、その時代の経済状況に合わせ保険料と年給付を見直していくため、予測しにくい将来にも対応できると言えます。

少子高齢時代の前は、現役世代が多く高齢者の寿命も今より短い時代。払い込んだ保険料に比べて年金額が高めに設定されていました。

しかし、少子高齢時代が進む将来、昔のままの年金制度が維持できるか不安も持たれる方もいると思います。

高齢時代は年金制度が中心で、民間年金保険はその不足を補うものと言われていますが、年金制度でなぜそんなことができるについてこれから解説していきます。

現役世代がリタイア世代を支える…しかし課題あり

年金制度は、働いている「現役世代」が支払った保険料を「リタイア世代」の年金給付に充てる仕組みです。

現役世代の人口が多い時代には、多くの人が高齢者を支えるので年金制度は余裕がありました。
しかしその後、日本は高齢世代が多くなる時代を迎えます。

高齢世代を支える現役世代の減少

〇1970年(昭和45年)
65歳以上の割合が7%を超える「高齢化社会」
〇1994年(平成6年)
14%を超える「高齢社会」
〇2017年(平成30年)
27%を超える「超高齢社会」

内閣府高齢社会白書(平成29年推計)によると、高齢者1人を支える現役世代の人数は以下に示すように減少しています。

高齢者1人を支える人数65歳以上の比率
1960年(昭和35年)11.2人5.7%
1970年(昭和45年)9.8人7.1%
1980年(昭和55年)7.4人9.1%
1990年(平成2年)5.8人12.1%
2000年(平成12年)3.9人17.4%
2010年(平成22年)2.8人23.0%
2017年(平成29年)2.2人27.7%
2025年1.9人30.0%
2035年1.7人32.8%
2045年1.4人36.8%
2055年1.4人38.0%
2065年1.3人38.4%

統計の年により高齢化比率は変動しています。
2025年の高齢化比率は、以下に示すようになっています。

  • 平成9年推定・・・27.4%
  • 平成24年推定・・・30.3%
  • 平成29年推定・・・30.0%

平成29年推定での高齢化比率は平成9年推定に比べ大きく減少していますが、平成24年推定に比べると僅かですが回復しています。

現役世代の減少への対策

保険料を支払う現役世代の減少は、人口動向調査から確実と言えます。
その減少を和らげる方策も取られています。

  • 税金の投入による国民全員で年金制度の支え
  • 世代間扶養だけでなく積み立て資金の運用
  • 働き方改革などによる保険料を支払う加入者増(主に厚生年金)

年金加入者(被保険者)の遷移

超高齢社会による現役世代の減少。年金制度に加入している方はどれほどいるのでしょうか。
まず、年金加入者というのは、以下のいずれかに属しています。

  • 第1号加入者
  • 20歳以上60歳未満の国民年金被保険者

  • 第2号加入者
  • 厚生年金被保険者

  • 第3号加入者
  • 第2号加入者に扶養されている20歳以上60歳未満の方

第2号加入者は、厚生年金に加入している企業・団体(公共機関を含む)に雇用されている方で、年齢に関係なく勤め始めた時に加入し原則70歳まで加入します。

第3号加入者は保険料の支払いはありませんが、国民年金加入者と同じレベルで年金を受給できます。

現役世代加入者数は減少している?

年金加入者数は、以下に示すようになっています。

超高齢社会で高齢世代を支える現役世代は減ってきていますが、年金加入者数はわずかですが増え、保険料の支払いの多い厚生年金加入者が増えています。

年度第1号加入者第2号加入者第3号加入者合計
平成25年度1,805万人3,966万人945万人6,718万人
平成26年度1,742万人4,040万人932万人6,713万人
平成27年度1,668万人4,129万人915万人6,712万人
平成28年度1,575万人4,267万人889万人6,731万人
平成29年度1,505万人4,358万人870万人6,733万人

年金受給者数の推移

年金受給者数は、以下に示すようになっており、国民年金、厚生年金ともに増加しています。

年度国民年金厚生年金
平成25年度3,140万人3,660万人
平成26年度3,241万人3,747万人
平成27年度3,323万人3,835万人
平成28年度3,386万人3,876万人
平成29年度3,484万人3,981万人

年金制度を維持する4つの仕組み

年金制度は、主に以下に示す4種の方法で運営されています。

  • 保険料収入
  • 積立金
  • 国庫負担
  • 給付水準を自動調整する仕組み「マクロ経済スライド」

保険料収入、積立金、国庫負担を元手に支払う年金額をマクロ経済スライドで調整して、これからの年金制度の運用および維持を行なっています。

保険料収入と収支

保険料収入と主に年金給付による決済状況を、以下に示します。

区分平成28年度平成29年度
国民年金保険料収入4兆4,309億円4兆1,740億円
国民年金給付等4兆3,816億円4兆1,607億円
収支493億円のプラス133億円のプラス
厚生年金保険料収入48兆7,555億円48兆0,114億円
厚生年金給付等45兆6,595億円46兆4,233億円
収支3兆0,960億円のプラス1兆5,079億円のプラス

収支とは、収入と支出という意味です。上記の表の通り国民年金、厚生年金ともに決済状況はプラスとなっています。

積立金の状況

積立金の状況を以下に示します

区分 種類 平成28年度 平成29年度
国民年金 積立金 7兆3,185億円 7兆3,132億円
時価相当額 8兆9,668億円 9兆2,210億円
厚生年金 積立金 110兆3,320億円 111兆9,295億円
時価相当額 144兆4,462億円 154兆9,035億円
合計 積立金 117兆6,506億円 119兆2,427億円
時価相当額 153兆4,130億円 164兆1,245億円

税金の投入による国庫負担。支払わないと損。

保険料は全額加入者が支払っているのではなく、税金の投入による国庫負担があります。
国庫負担は平成16年度までは、3分の1ですがその後徐々に増えていき、平成21年度からは2分に1になっています。

このことから、年金制度は現役世代だけでなく、全国民が支えているとも言えます。

現在「*基礎年金」は、国と加入者の折半になっています。
*国民年金は基礎年金とも呼ばれ、すべての年金の基礎となるものです。厚生年金とは国民年金が含まれているもの。厚生年金に加入するという事は同時に国民年金にも加入していると言えます。

日本に住所のあるすべての人が年金制度に加入しますが、保険料を支払わなくてもすべての人が納付する税金から国庫負担金が支払われています。

このため保険料を支払わないと「税金」として一部は負担しているのに、年金を受給できない、ということになるため非常に不利な状況になります。

経済的に保険料を支払えない状況では、保険料の延納もありますので必ず加入・支払いをしましょう。※その後追納しないと年金額がその分下がります。

国庫負担は2分の1ですので、支払った保険料の2倍の年金給付があると言えます。

マクロ経済スライド

マクロ経済スライドは、現役世代の人口減少と収入の増減から年金の給付額を調整する仕組みです。

年金を受給し始める時点で、現役サラリーマン世帯の平均所得の50%を上回るように設定されます。

年金制度の持続性

年金制度は上で述べたように様々な仕組みで運営されていますので、収入がなくなる、あるいは減少する高齢者にとって最も頼りになる制度と言えます。

高齢時代の生活費は年金を主体に、貯金や民間年金保険、投資などで補うことになります。

年金制度は国民年金法・厚生年金法に基づき国によって管理や運用されているため持続性含め安全な制度です。そこで次回は年金制度を管理している厚生労働省、運用している日本年金機構について詳しくお話ししていきます。

いったいどのような体制で年金制度が保たれているのでしょうか。

まとめ

〇年金制度は「世代間での支え合い」
〇少子高齢時代ではこの制度を維持するのは困難に
〇高齢者1人を支える現役世代の人数の減少
〇年金制度は4種の方法で維持されている
〇支払わないと不利な状況に

イラスト:熊野友紀子
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