年末調整を行わない個人事業主やフリーランスの方は、税務署に所得金額と税額を確定申告することで納税額を決定しなければなりません。その際に必要になる作業が所得税の計算です。
最近では自動で計算してくれるアプリやソフトも多くありますが、計算方法を知っておくことは大切です。この記事では、確定申告を行うにあたって必要な所得税の計算方法を解説します。
所得税とは
所得税とは、個人の所得(収入から必要経費を差し引いた額)に対してかかる税金のことです。
所得税は1年間の総所得から様々な控除を引いた課税所得に、予め決められら税率を適用することで計算することができます。所得税には超過累進課税率が採用されており、課税所得金額に応じて納める金額が高くなります。
所得税の計算が必要な人
所得税の計算が必要になるのは、基本的に確定申告を行う人です。会社員であれば、一部の例外を覗き原則として確定申告の必要がなく、所得税の計算はありません。自分で所得税の計算をする必要があるのは次のような人です。
- 個人事業主やフリーランスの人
- 一定額の公的年金を受け取っている人
- 株取引で利益が発生した人
- 事業所得以外にその他の所得がある人
では、所得税の計算が必要になる条件を詳しく見ていきましょう。
①個人事業主やフリーランスの人
「事業所得」に分類される所得によって生計を立てる人です。納税のための確定申告が義務であり、所得税の計算が必要になります。
②一定額の公的年金を受け取っている人
公的年金等の収入額が、法律で定められた控除額を超えている場合には確定申告の必要があります。(例:公的年金等の収入金額が400万円を超えている場合)
③株取引で利益が発生した人
株やFXなどの資産運用により利益を得た場合にも確定申告が必要です。ただし、源泉徴収ありの特定口座や、税金の優遇措置のある口座を利用している場合には、その限りではありません。
④事業所得以外にその他の所得がある人
その他の所得がある場合にも確定申告が必要です。主なその他の所得には、土地や建物の不動産収入や金融機関の利子所得などが該当します。
給与所得があっても所得税の計算が必要な人
会社員として企業から給与所得がある人でも、次のような場合は、例外的に確定申告が必要になることがあります。
- 年間の給与所得が2000万円を超える人
- 給与収入以外に年間で20万円を超える所得がある人
- 2か所以上から給与を受けていて片方の収入が一定額を超えている人
詳しく見ていきましょう。
①年間の給与所得が2,000万円を超える人
会社員としての給与所得が2,000万円を超える場合には、年末調整の対象外となり確定申告が必要です。
②給与収入以外に年間で20万円を超える所得がある人
年末調整を行った所得以外に、副業等で年間20万円を超える収入がある場合には確定申告が必要です。
③2か所以上から給与を受けていて片方の収入が一定額を超えている人
2カ所以上の給与すべてが源泉徴収の対象である場合に、年末調整がなされなかった給与が年間20万円を超える際にも確定申告が必要です。
所得税の計算方法
所得税の計算をする上で知っておかなければならない要点を記載します。
・収入:1年間で得たお金の総額
・所得:収入から必要経費を差し引いて残った額
具体的な手順
ステップ1:所得額を確定する
まず初めに1年間の所得額を算出します。
・「1年間の収入総額」-「※必要経費」=所得額
※必要経費とは、家賃や備品購入費などの事業を展開する上で必要な経費です。内容は事業ごとに異なります。
ステップ2:課税所得額を算出する
ステップ1で算出した所得額を元に、課税所得額を算出します。
・「所得額」-「※所得控除額」=「課税所得額」
※所得控除には、基礎控除や医療費控除など15種類の控除が存在します。個人の事情に合わせて税負担を軽減するための措置です。
〈参考〉国税庁 所得控除の種類
ステップ3:納税額を計算する
課税所得額を算出したら、金額ごとに予め決められている税率および控除額と組み合わせ、基準所得税額を決定します。
・「課税所得額」×「※所得税率」×「控除額」=「基準所得税額」
※所得税の税率に関しては速算表をご覧ください。
〈参考〉国税庁 所得税の税率
ここから、東日本大震災の復興施策である復興特別所得税2.1%を加えた金額が納税額となります。
・「基準所得税額」×「2.1%」=「復興特別所得税額」
・「基準所得税額」+「復興特別所得税額」=「納税額」
ステップ4:税額控除を差し引く
最後に、決まった納税額から直接差し引くことのできる※税額控除を確認します。
・「所得税額」-「※税額控除」=「納税額」
※税額控除には、住宅の新築や取得控除である住宅借入金等特別控除など、様々な控除が存在します。
〈参考〉国税庁 税額控除
まとめ
この記事では、確定申告に必要な所得税の計算方法について解説しました。所得税の計算は控除の数や金額により必要な手順が異なります。また、申告期限が決まっており延滞すると罰則が存在します。
確定申告の申告書作成には一定の時間が必要です。円滑な確定申告を行うためには、申告方法を正確に把握して時間に余裕を持った申告準備を行いましょう。