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日本におけるキャッシュレス決済は、クレジットカードをはじめとして、2019年10月の消費税増税後には、スマホ決済が躍進している傾向にあります。
経済産業省の2018年4月の「キャッシュレス ・ビジョン」によると、2016年の日本におけるキャッシュレス決済比率19.9%を、2025年には40%、将来的には80%に引き上げることを掲げています。
先進国の動向と日本の対応
世界において、キャッシュレス決済比率のトップにいるのは韓国です。
また、スウェーデンのキャッシュレス決済比率は、2016年には51.5%ですが、2025年には現金が使えなくなると予測されています。
この両国に共通するのが、国家を挙げた取り組みです。
韓国
韓国は現在、キャッシュレス決済比率で世界トップを誇ります。 韓国のキャッシュレス決済比率が高い理由としては、以下のような国をあげての取組です。
国がキャッシュレス決済を進める背景に、1997 年の東南アジア通貨危機の打開策として、実店舗等の脱税防止や消費活性化をするために、政府主導による以下に示すようなキャッシュレス化が推進されるようになりました。
- クレジットカード利用分の所得控除
- 宝くじ権利付与
- 店舗でのクレジットカード取扱義務付け
- 硬貨発行の削減に向けた電子マネーの活用
これらの取り組みに加えて、どの店舗でもキャッシュレス決済を使えることが、韓国におけるキャッシュレス決済の高度な普及の背景にあります。
スウェーデン
スウェーデンでは、金融機関を中心に国家を挙げた生産性向上、冬季期間の現金輸送の困難さや慢性的な人手不足、犯罪対策として、キャッシュレス化を推進しています。
スウェーデンでのキャッシュレス化は、デビットカードから始まり、スウェーデンの複数の大手銀行が立ち上げたスマホ決済アプリ「Swish(スウィッシュ)」に移行しています。
Swishは、少額な支払いで決済ができること、そして、リアルタイムでの決済が可能であることで、スウェーデンの多くの国民にとって、現金の代替になっています。 Swishは、交通機関や店舗等に加えて、個人間のやり取りにも使えます。
このように、日常生活においてあらゆるシーンで使えることから、Swishがスウェーデンをキャッシュレス社会へ導き、2025年には現金決済がなくなるだろうと予測されているのです。
日本の対応
日本では、これまで主に民間主導によってキャッシュレス決済が行われてきました。
しかし、2019年10月の消費税増税のタイミングで、国がキャッシュレス決済に向けた支援策を実行しています。
- 経済産業省の「キャッシュレス ・消費者還元事業」
- 総務省の「マイナンバーカードで地域キャッシュレス 」など
日本の中小店舗は、キャッシュレス決済に対する利益率が低く、さらにキャッシュレス決済において、店舗側が3%前後の手数料を負担しなければならないといった事情がありました。
しかし、キャッシュレス決済の即時払い(リアルタイムペイ)のスマホアプリ(スマホ料金などで支払う後払いも選択できます)の登場により、現在は中小店舗においても、キャッシュレス決済を導入しやすくなりました。
キャッシュレス化の進展には、使える店舗が増えることがポイントなので、今後導入店舗が大幅に増えることで、キャッシュレス化は進展していくと予想されます。
日本のキャッシュレス決済の推進予測
キャッシュレス化の進展は、店舗と消費者と国(自治体)、お互いにWin-Winの関係が生じることから加速していくと予測されます。
店舗等
店舗等におけるキャッシュレス決済のメリットには、次のようなものがあります。
- スマホアプリによる導入コストや手数料の低額化
- 購入履歴データの活用による事業拡大
- キャッシュレス化の生産性の向上による人手不足の低減
- 現金を使いにくいインバウンド顧客への対応
消費者
消費者から見たキャッシュレス決済には、以下に示すメリットがあります。
- 現金を持ち歩かなくて良い
- 買い物や交通で時間を節約できる
- 履歴が残るので管理が容易
- 現金よりも安全
- ポイント特典がある
国(自治体)
国(自治体)は、基本的には税金で運営されていますが、税金や教育・生活などの国民(住民)サービスに費用を徴収することが多くあります。
これがキャッシュレス化されると、徴収の公正性・確実性と徴収コストの大きな削減が見込めます。
さらに、キャッシュレス化によるサプライチェーン全体の効率化、さらには新たな価値創造による新産業の創造に繋がる可能性も期待できます(経済の活性化)。
国の施策
キャッシュレス化に向けた2つの国の施策を紹介します。
経済産業省「キャッシュレス ・消費者還元事業」
キャッシュレスのマークのある店舗(中小店舗)で、代金を以下の方法で支払うと、2019年10月〜2020年6月まで最大5%がポイント還元されます。 フランチャーズチェーン店の中小店舗等では2%が還元されます。
- クレジットカード
- デビットカード
- 電子マネー
- QRコード決済アプリ等
店舗についても、キャッシュレス決済においては、以下に示すメリットがあります(事業期間内)。
- 端末本体と設置費用が無料
- 期間中の決済手数料は実質2.17%以下(スマホ決済アプリは無料も)
- 消費者にポイント還元で集客力UP!
総務省「マイナンバーカードで地域キャッシュレス 」
総務省は、商店街での買い物などに使える「自治体ポイント」をクレジットカード払いや銀行の口座振替でチャージし、事実上の電子マネーとして利用できるクラウド型システムを構築し全国100以上の自治体で実証実験を行っています。
自治体ポイントは従来より、市町村からボランティア活動の実績に応じて受け取ったり、航空会社のマイレージなどを合算・変換したりしていましたが、恒久的に利用できるように、マイナンバーカードのICチップの電子証明書とひもづけてポイントをチャージが可能となる見込みです。
技術の進展
キャッシュレス決済につながる以下に示すような技術開発が進められています。
- セキュリティーを高めるブロックチェーンの取り込み
- 停電に備える太陽光発電や充電池の装備
- 個人間および個人と企業間での送金(すでにできるアプリもあります)
- カメラとスマホを結びつけた無人店舗
- スマホがなくても利用できる顔認証(顔パス)など
将来的に、金融機関の縮小(支店やATMの削減、口座維持手数料の徴収など)が進むと予想されます。
現段階では、まだキャッシュレス決済の安全性に不安を感じる人も少なくはないですが、今後、キャッシュレス決済のセキュリティと利便性が高まれば、現金社会からキャッシュレス社会への流れが早まることになるでしょう。
まとめ
いかがでしょうか。
今回は、今後の日本のキャッシュレス決済についてご説明いたしました。
2019年10月の消費税増税以降、利用者が着実に増えているキャッシュレス決済ですが、今後もさらなるキャッシュレス決済の飛躍が見込まれます。
キャッシュレス決済の技術が高まれば、より便利でスムーズな決済が可能となるため、キャッシュレス決済への期待が高まるでしょう。